「子孫が受け継ぐ思い」

参院選の玉城デニー氏の沖縄県知事への転出に伴う沖縄3区補選は、主要な国政野党が支援した無所属新人の屋良朝博氏(56)が当選したニュースを見た。

夕闇のしのびよれども気にかけぬ翁は灯(ひ)をもともさんとせず

この歌は、1953年から9期にわたって彦根市長を務め、「殿様市長」と呼ばれた井伊 直愛(いい なおよし、1910年7月29日 – 1993年12月2日)氏の妻である井伊文子さんの歌である。
井伊直愛氏は井伊直弼の曾孫にあたり、彦根市長在任中の1968年、明治百年を契機に、「桜田門外の変」以来の歴史的わだかまりを超えて彦根市長として、井伊家当主として、水戸市の木村伝兵衛市長と話し合い、同市と親善都市盟約を締結したことでも有名である。

井伊文子さんは、、最後の琉球国王・尚泰の孫である尚昌侯爵の長女で東京で生まれ育ち、沖縄には何度か行ったことがあるのみであったという。文子さんは歌人であった。14歳から佐佐木信綱に師事し、16歳で処女歌集「中城さうし」を出した。冒頭の歌はその中の1つである。

沖縄を基地問題などニュースをよく目にする。また、琉球王国独立などと叫ぶ輩(やから)もいる。故郷(ふるさと)を大切に思う行動の表れだと思うが、本当にそれで大切な故郷が残るだろうか。それより以前に、他の誰からの思惑もなく、心から故郷を未来に残したいという思いに駆り立てられて行動をしているのだろうか。純粋な心は伝わってくるものだ。

障子(ミアカリ)に映れる影はわが影かあらじかとまどふ髪のかはれるに

東京生まれで東京育ちの文子さんは、それでも沖縄を心の底から愛していたのだろう。「佛桑花(ぶっそうげ=ハイビスカス)の会」を設立し、経済的理由で就学困難な沖縄の生徒に奨学金を贈るなど、沖縄の青少年育成の事業に取り組んだ。