「培其根」(ばいきこん)
十数年前、故東井義雄先生の「培其根」が復刻するのを聞いて、東井義雄記念館のある兵庫県豊岡市但東町まで夜中に走り、開館と同時に入った。記念館にも2冊しかなかったが愛知県から来たという無礼な私に1冊譲っていただいた。
故東井先生の生徒への、先生への目線に目からうろこであった。「東井先生を教師というなら、私はチンピラにもならないと本気で自分を振り返った。」退学生に手紙を書いた。卒業生にも手紙を書いた。日記を書こうと指導に従わない生徒を説得し、毎日日記にコメントを書いた。そんな生徒たちが、私が教師になるための活きた教科書であり、先生でもあった。
名古屋市立大学の先生が「何か植物を無重力で育てたら、なんの抵抗もないから根っこが伸びて、くしゃくしゃにもしゃかってしまい根の役割を果たさないだろう。やっぱりある程度の負荷が成長には必要ですよ。」人間が育つのも負荷がないとだめだ。どれだけの負荷に耐えて人間らしく成長するのか。子供のときは、その負荷を我々大人が与えなければならない。
「ひもろぎ苑」が掲げる旗には「培其根」と書かれてある。「その根を培え。」私自身に向けた言葉である。