「誰でも若い時は未熟だった」

徳川宗春と言う人がいる。ご存知の方も多い。私などは生粋の愛知県尾張の人間だからなじみ深い。ちょうど江戸時代8代将軍と言えば徳川吉宗の時代。7代尾張藩主が徳川宗春だった。

 

吉宗が出した「享保の改革」である倹約経済政策に、宗春は自由経済政策理論をもって立ち向かった。宗春は自身の著書『温知政要』(21箇条)を藩士に配布した。その中で「行き過ぎた倹約はかえって庶民を苦しめる結果になる」「規制を増やしても違反者を増やすのみ」などの主張を掲げた。これらの政策には、質素倹約を基本方針とする幕府の享保の改革による緊縮政策が経済停滞を生み、蝗害による不作も重なり、各地で暴動が頻発していたことへの反発があると言われている。

 

宗春の著「温知政要」には「若い人に教訓しようと思ったら、まず自分が若かったころのことを思い出すべきである。若い人の言い分も理解しつつ、程よく諭すことによって、若い人に、「もっともなことだ」「自分を大切に思うからこそ言ってくれているのだ」と実感させることが最も重要なことで、本人にそのような自覚が生まれれば、気持ちを入れ替え、過ちを改めて、立派な人間になる。」と書いてある。

 

難しい政策のことが書いてあるばかりでなく、人を育てることが書いてある。昔から、我が国の為政者の著した書物には、必ず人はどのように育てるのがよいかということが書いてある。

どのように領民から搾取しようかではなく、どのように次の「家」を守る人物に育てるのかが、書かれている。多くの人がかかわり、当主となる子どもを厳格に育てる。我が国の綿々と続く歴史と文化にはこんなところに基盤がある。

 

現代の為政者たち。他人の足を引っ張り、正義を叫び、罵声を浴びせるだけではこどもの手本にはならない。またお金をただにしても子供は育たない。多くのおとなが子供と向かい合い、かかわることを覚悟しなければならない時だ。

高山曜三