塾でたまに話をする。すると子供たちは塾長が話しているからと内容が理解できようが出来まいが相槌(あいづち)を打ってくれる。話している側としてはそれだけで安心して気持ち良くなるから趣旨から外れることがしばしばある。
そもそも「相槌(あいづち)を打つ」とは日本刀を作る工程の中から来ている。日本刀の出来るまでには次のような膨大な工程がある。
■ 小割り(こわり)■ テコ棒とテコ台を作る
■ 積み重ね■ 積み沸かし(つみわかし)
■ 鍛錬(たんれん)▼ 下鍛え▼ 上げ鍛え(あげきたえ)
■ 芯鉄を鍛える■ 造り込み■ 素延べ(すのべ)■ 火造り
■ 切先つくり■ 焼き入れ■ 合い取り■ 鍛冶研ぎ
■ 茎仕立てと銘切り
この工程の中にある「鍛錬(たんれん)」は、折り返し鍛錬を行う工程である。鍛錬の目的は、鋼を何度も折り返して鍛えることにより、粘りをもたせて強度を増し、不純物を叩き出し、炭素量を平均化させる。刀匠だけでは出来ない作業なので、向こう鎚とともに作業を行う。向こう鎚は刀匠の合図に合わせて叩いていくが、合図に従って打つことを「相槌(あいづち)を打つ」という。
相手の話に合わせて何か反応を見せることを「相槌を打つ」というのはここからきている。
この「向こう鎚」がとても重要で、誰でも出来るというものではないらしい。彼らが持つ鎚で一番重い物は三貫(約11㎏)もあり、また沸いた鋼(はがね)の状態を見て、強く打つのか軽く打つのかを見極めて打たねばならない。これを見極めるには、自分も刀工としてかなりの修業を積まなければできない。また、叩く力、場所によって後々悪影響が出てしまうので、腕の立つ弟子が勤めるという。
さてさて大変なことを知ってしまった。授業も、研修もへぼな講師に一生懸命相槌を打ってくれることに感謝しなければ。
高山曜三