「言霊(ことだま)」

日本(やまと)の国は言霊(ことだま)さきはふ国ぞまさきくありこそ」
《日本の国は言霊の霊力によって幸せがもたらされる国です。私は今、この願いを口にします。どうか幸せでご無事にお過ごしください。》柿本人麻呂(万葉集)

「言霊」(ことだま)とは、「声に出した言葉が、現実の事象に対して何らかの影響を与えると信じられ、良い言葉を発すると良い事が起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こるとされた。」という意味である。

そうやって言われるのは、昨日今日の事ではない。万葉集に柿本人麻呂のこの短歌が載っているくらいだから、千数百年もの間言い伝えられてきたのである。どこかの国のように千年も恨みつらみを言っていては幸せにはなれない。まあそれぞれの事情だから致し方ない。それよりも我が国のことが大切だ。最近は小学校から英語、英語とやかましい。確かに今から社会を生きていくときに「英語」は大切だろう。しかし、だからと言って「国語」はこのままで良いのか。と考えてしまう。

小学校の時、両親の仕事の都合でアメリカに行っていた生徒が塾に来ていた。確かに英語はできる。私は、その生徒の事情を知らず国語を教えていたが、文章で答える問題は、箇条書きで文章にはなってないことが多かった。「英語の訳じゃないんだから、もっと日本語らしく答えなさい。」とよく言っていた。後で生徒の事情を知り、事の根深さに気づかされた。

故坂村真民先生の詩には「言霊」が宿っていると言われる。私も先生の「本気」と言う詩はいつも振り返りの原点になる。
本気
本気になると
世界が変わってくる
自分が変わってくる。
変ってこなかったら
まだ本気になっていない証拠だ
本気な恋
本気な仕事
ああ
人間一度
こいつを
つかまないことには

高山曜三