「火をつける」

当塾は成績で入塾基準を設けていない。本人の「やる気」と保護者の姿勢で入塾をしてもらっている。だから、入塾の時教育に対する考え方をご説明する。ご理解いただけない保護者は、子供を入塾させないからわかりやすい。

「夏には野外合宿があります。」と言うだけで、「うちは参加させません」と言われるご家庭がたまにある。

あるいは、子供より、自分の学歴を言って最低これくらいの学校に行かせたいと言われる保護者もいる。25年の年月でいろいろな保護者を見てきた。こちらの意に添わなければ、いくら学力があってもお引き取り願う。逆に本人の「やる気」があればたとえ、オール1に近くても、少々荒くても入塾を許可している。

 

ウィリアム・アーサー・ウォードは、アメリカのルイジアナ州出身の作家、学者、牧師、教師である。

彼の言葉に「普通の教師は言わなければならないことを喋る。良い教師はわかりやすいように解説する。優れた教師は自らやってみせる。そして、本当に偉大な教師というのは生徒の心に火をつける。」がある。

思い起こせば22歳で、先輩の教師にこの言葉を聞かされた時、それほど深く考えず、正面から生徒に向かい合いすればそんなことはたいして難しいことではないと思っていた。実際満足する場面も何度かあった。年齢を重ねると「生徒の心に火をつける」事の難しさを思い知る。

先ず向き合って生徒の話を聞くことが難しくなる。また彼らも本心から話そうとは思っていない。私もしばしば彼らとの言語の違いに戸惑う。

今年から大学生を教えることになっていたが、まだ彼らの顔を見ていない。リモート授業、遠隔授業と言う名目で実際のコミュニケーションはいまだに取っていない。「生徒の心に火をつける」どのようにしたらよいのか。ますます難しい時代だ。アメリカでは違った意味で一般大衆に火がついたみたいだ。

高山曜三