明治の初めのころ日本に来たロシアの海軍士官ゴローニンは日本を「子育て上手の先進国」として賞賛した。
「日本人は子供に読み書きや法律、歴史、地理などを上手に教えるが、もっと大切な点は幼いころから子供に忍耐・質素・礼儀などきわめて巧みに教えることである。」と言っている。こうした教育は「実語教」「童子訓」などにまとめられ、江戸時代に確立されている。江戸時代の子育ての基本は「小学」にある。
小学とは、中国,宋代の修身,作法書で『小学書』ともいう。全6巻で1187 年に成立した。初学者のために朱子が編纂した書物であるが,内容は,古聖人の善行や箴言および人倫の実践的教訓などを集めた啓蒙的なものである。
安岡正篤先生は「人間の学には自己を修める学と人を治める学の二つがあり、前者が小学、後者が大学である」と言っておられる。
「小学」の<立教篇>の年代別教育法には男女9歳までの教育法は、まずそばに付く侍女の人柄を選ぶ。また、人柄の良い者を子守り役に選ぶ。第一に温和で慈しみ深く、質素でっ慎みがあって、言葉数の少ない者が良い。箸を使うようになったら右手を使うことを教える。言葉を話すようになったら、男子はしっかりと返事をし、女子は静かに返事をするように教える。などなどである。
己を修める学の「小学」から人を治める学の「大学」。国会の中では政治家の野次が飛び交い、外では汚い言葉で年長者を罵倒している現代。
「小学」には8歳になったら、少しづつ礼儀を教える。門戸の出入り、座席への着席、飲食時に目上の人よりも遅れさせる。また、人に対する敬意や謙譲の礼を教えよ。と書いてある。
もう一度「小学校」からやり直してはいかがか。と言われかねない人が国会議事堂になんと多いことか。
高山曜三